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 しかし、有本はその顔のほとんどを手のひらで覆い隠してしまっていた。 取り立てて大きい手でもないので、有本の顔の方が小さめなのだろう。  告げてくる有本の声は、今にも泣き出してしまう寸前(ギリギリ)の様に聞こえて仕方がなかった。 「もう――、三井ったらぁ!ホントにダメだっばぁ・・・・・・」  回らない舌で途切れ途切れに、つっかえつっかえしつつも、やっとのことで有本は言い切る。  その後、ダメ押しの如くに『クスン』と鼻を鳴らした小さな音が、俺にとっての決定打、とどめの一撃になった。  あぁ、有本はやっぱり、何をしても、どこまでいっても、とことん可愛い・・・・・・  俺は、有本の顔にピタリとくっついている有本自身の手のひらを退けた。 ――根元の手首を掴まえて、一気に引き剥がしたのだ。 不意打ちも不意打ちだったのが功を奏して、呆気ないほどに有本の手のひらはあっさりと自分自身の顔から剥がれた。  全く露わになった、俺の手によって暴かれた有本の顔は表情は、驚きに塗り固められていた。 大きく見開かれた目の表面には薄っすらと、水分が、涙が膜を張っていた。 「ど、どうしたっ⁉そんなに嫌だったのか⁉」
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