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けしてなかった。
そもそも有本には俺に答える義務なんて、まるっきりないはずだ。
「三井には関係ないだろ」と、有本に突っぱねられても文句が言えない、――仕方がない『質問』だった。
案の定、
「聞いてどうするの?」
という有本のあっさりとした『返答』が、俺の右頬を叩いた。
いや、「叩いた」と言うよりは、「そおっと撫でた」と言った方が相応しい優しさだった。
――ささやかさだった。
有本の声は柔らかくて、やっぱり哀しいままだった。
それがとっさに口惜しいと思った、思ってしまった俺は、
「別にどうするつもりもない。ただ、気になっただけだ」
と、内心とはまるっきり真逆な、素っ気ないことを言ってしまった。
ここまで言われた上で、あえて有本自らがベラベラと語ってくることはないだろうと踏んだ。
正直言うと、もっと、もっと聞きたかった。
でも一方で、聞いてしまったら最後、「後戻りが出来なくなる」様にも感じられていた。
――単なる、俺の予感でしかなかったのだが。
有本が声を立てずに笑ったのが、すぐ右隣なので分かった。
顔が、表情がほころんだのが、伝わってきた。
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