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2019年夏。
あの日も夕立の激しい日だった。
残業をしている間にでも止むだろうと踏んでいた俺の読みは、全く外れた。
激しい雨足は、俺が仕事を片付けて終えて夜になっても止むどころか、一向に弱まる気配すらしなかった。
いい加減、痺れを切らした俺は最低限の照明しか点けられていないエントランスへと下りていった。
当然、誰もいない――。
しかし、それは俺の勝手な思い込みだった。
正面の自動ドアを出てすぐの車寄せに、人影が見えた。
近付いて行くと人影は振り返り、よく見知った顔が俺を見た。
「三井――」
「何してんだ、こんな所で。帰らないのか?」
人影の正体は、同じ課に所属する有本紘だった。
俺よりも随分前に帰ったはずの有本は、再び前を向いてつぶやいた。
「雨、止まないかなと思って」
「あー、この降り方じゃ、まだ無理じゃないか」
口先では何でもないように軽く応じながら、俺は雨の夜空を見上げる有本の左横顔をじいっと見つめた。
辺りが薄暗いせいか、元々色白な肌自体がぼんやりと光を放っている様だ。
有本とは、今年同じ課になったばかりだった。
大学院を卒業後、新卒入社してきた有本が俺の居る課へと配属されてきた。
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