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俺が何の反応も、――うなずきも返さないままだったので、有本は前を向いてしまった。
内心、混乱した気持ちをどうにか鎮めようと必死過ぎて、返事をするどころじゃなかった。
「何だ、冗談なのか・・・・・・」と本気で落胆した自分に、相当驚いていた。
有本が言う。
「元カレは、大学院の准教だったんだ」
「えっ」
俺がたったの一音だけでも発したのに安心したからか、有本は左を見てきた。
まるで俺の顔を覗き込むかの様に、自ら近付いてきた。
――少なくとも、俺にはそう思えた。
「彼が講師で、俺が新入生の時に知り合って」
「新入生って・・・・・・現役だったら、十八だろ?」
「うん。誕生日が三月だから、十八になったばかり」
「・・・・・・」
「ソレってヤバくね?犯罪じゃん!」と、有本の元カレを糾弾したいのを、俺は懸命に堪える。
気を紛らわせるためにも、「有本は早生まれ」と個人情報の追加をした。
俺の沈黙を受け入れてくれたのか、有本はさらに詳細を語ってくれた。
「その時も、傘がなくて途方に暮れていた俺に、『一緒に入っていくように』って言ってくれたんだ」
「・・・・・・」
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