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つい、思っていたことがまんま、顔にも出てしまっていたのだろう。
有本は驚いた様に目を見張ったが、一瞬後には表情を顔を和らげた。
花が咲く瞬間を目撃したかの様に思われた。
微笑未満の、極めて穏やかな顔をした有本が言う。
「よかった」
「へ?」
つい、間が抜けた一音で返事をしてしまった俺へと、有本はそのままの表情で続ける。
「三井が笑ってくれて」
「別に、笑ってなんか――」
「いない」と断言して、全否定が出来ないのは俺の弱さ、ふがいなさだと自覚している。
――自覚したからといって、有本の花の様な顔の前では何の役にも立たないのだが。
何かと浮世離れをしていて、フワフワと今一つ掴みどころがない有本だったが、さすがに超能力者ではないはずだ。
そこまで行くと『浮世離れ』もマジもマジ――、モノホンだろう。
しかし、有本は全てを見透かしたかの様な顔で、俺へと言ってきた。
「くたばっちまえ」
「へっ?」
何故に有本から、しかも、いきなり罵られなければならないのか?
訳が分からなさ過ぎて、俺は思わず喉の変な所から変な声が出てしまった。
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