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 その証拠に、有本は俺から顔を目を背けた。 うつむき加減で、言う。 「優し過ぎて、最初っからあやしいところしかなかった」 「・・・・・・」  返す言葉がとっさに浮かんでこない俺へと、目線だけを寄越してくる。  ひどく仄暗い、陰惨な光を浮かべた目だった。  苦笑で小さく鼻を鳴らした後、有本が吐き捨てる。 「『月が綺麗ですね』なんて言ってくる男に、ロクな奴はいないよ」 バッサリ、一刀両断だった。 「だったら、な――」  そこまで言って、言いかけて俺は止めた。 「何でそんなヤツに応えて、付き合ってたんだ!」と続けて問い(ただ)したいのを、ひたすら懸命に堪えた。  有本が返して、言ってくるだろう『答え』は、たったの一つきりだけだ。 俺にはそれが、何であるのかが分かる――。  それをあえて有本の口からは直接聞きたくなくて、俺はジタバタと往生際も悪くもがく。 言いかけた質問をギリギリ土壇場で引っ込めるのが、そのいい証拠だ。  有本はいくら周囲とは雰囲気がまるで違ったイケメンであっても、さすがに超能力者ではないはずだ。 ――しかも、透視能力を持つ(タイプ)の。
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