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有本が何でいきなり、そんな〆みたいに一気にまとめてくるのかが、本気で分からなかった。
しかし、それはすぐさまに分かった。
いや、――分からさせられた。
ピタリと足を止めた有本は、斜め右を見遣った。
「――そこのコンビニで、傘を買って帰るよ」
「・・・・・・」
有本が視線で指し示してきたコンビニは、会社の最寄りの店舗だった。
つまりは、会社から一番近いコンビニだ。
何時もだったら、普通に歩いて五分もかからない場所に在るはずだった。
今日は、今はやけに、たどり着くまでに長い時間がかかったものだと感じられた。
そして、それはけして嫌ではなかった・・・・・・
まだまだ全然、有本の話を聞き足りていない。
そもそも、俺の話はほとんどしていない。
俺の話は捨て置いていても、もっともっと有本の話を聞いていたいと思った。
「話を聞いてくれてありがとう」的なことは、おいそれとは言うもんじゃないと、有本によってつくづく思い知らされた。
言った有本は角を立てないように、ふんわりやんわりとした社交辞令のつもりでだったのだろう。
――はっきり言って、逆効果だった。
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