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かえって余計に、有本のことが気になった。
なるに決まっている!
だからといって、直接行動に打って出るのはどうだろう――。
真っ先に自分でも驚いて、その後で呆れ果てた。
「じゃあ、また明日会社で」
一方的に別れの挨拶を述べ、コンビニへと向かって歩き出そうとした有本の左腕を俺は掴んだ。
「三井・・・・・・?」
当然の如く有本は何事かと振り返り、俺を見た。
有本の肘のすぐ上は、肉が薄かった。
骨の硬さそのものまでをも、手のひらで感じ取ることが出来る。
瞬間、俺は既視感に襲われた。
『覚えた』のではなくて、『襲われた』と感じられる程までに激しい感覚だった。
そう――、さっき同じ様にして有本の腕へと触れたことを思い出した。
当たり前なのだが、あの時の感触そのままだった。
ほとんど骨なのだから、硬い。
乾ききっているはずなのに、実に瑞々しく生々しく感じられた・・・・・・
俺を見てくる有本の顔は、ひどく暗かった。
――いや、けして有本の表情が曇っていたわけではない。
有本のすぐ背後に在る、控えているコンビニの照明の諸々が眩し過ぎていただけだ。
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