団地に引っ越す

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 リフォーム業者さんとの最初の打ち合わせは現地の部屋でおこなった。  前の部屋の解体が始まっていたので、ごちゃごちゃしていた。  一郎は建設会社時代が懐かしいのか、現場を見られて嬉しいのか始終機嫌が良かった。真理は大工道具やむき出しの床などがちょっと怖かった。  何度かリフォーム中に訪れるうちに機械にも大きな音にも慣れて行った。  元々大体のリフォームの要望は話し合い済みで、現場に行って、広さを見ながらフローリングの色見本とか、沢山のクロスの色見本とかを見せてもらい、カタログを借りてじっくりと家で決めることにした。  決める事は沢山あった。各部屋の壁紙の色。トイレやキッチンの壁紙の色や模様。トイレや水周りでは床のクロスの色や模様。  他にはショールームに行って、実際のお風呂や、洗面台やトイレを見せてもらう事。あぁ、ガス代も見に行った。  後は照明。  決める事がとても多い。  真理は頭がごちゃごちゃして、もう、どれ。がいいとは決められなくなってしまった。  一郎がこれいいんじゃない?と言ったもので間違いないと思っていた。  それでも『全部任せるよ。』と言い切ってしまえばあまりに無責任な気もして、一緒にカタログを眺めた。  一郎もきっと、真理がよくわかっていないことに気づいていて、それでも根気よく説明してくれたのだと思う。  全体の雰囲気を決める、フローリングとクローゼットや各部屋の床や扉の色はリフォーム業者さんの意見を良く聞いて、その中から一番自分たちでしっくりするものを選んだ。  壁紙はそれこそ、リフォーム業者さんはどれでもどうぞ。な感じだった。お金もあまり変わらないというのだ。  真理にはよくわからなかったが、リビングの片側だけ別の色の壁紙で雰囲気を変える。なんて事も一郎に説明された。  トイレの壁紙や床は狭い空間だけど、よく使う場所なので真理も真剣に見た。      水周りについては、最初に予定されていた水回りの金額よりも、大分高くなってしまった。  最初の予定されていた洗面台がこれから使うのにLEDではなく、蛍光灯だったり、置いてある物がむき出しで見えたり。  後はお風呂に手すりがなかったりしていたので、これも変更はやむなしと思い、ショールームに行った。  ショールームもコロナの渦中だったので、人数制限があって、なかなか見に行かれなかったが、なんとか予約を取って見に行った。  苦労して予約をとったので、きっと普通に見に行くよりも真剣に選んだ気がする。   水回りについては、真理は妥協したくなかった。    これから年を取れば電球を替えるのだって大変になる。当然LEDの物にしたい。それに、お風呂には絶対に手すりが欲しい。  お風呂の色合いは夫がぱっきりと恰好の良い色合いのものを選んでくれた。  バスタブもこれまでの家よりは少し広いものが入れられたし、シャワーを上下するパイプが手すりにもなり、バスタブの奥にも手すりをつけてもらった。86037088-4ec2-4387-892f-d96d66deaaca  洗面台も予定ではごく一般的なものだったが、鏡がしっかり全面にあって、収納力の高いものを選んだ。  団地の水回りはそんなには広くない。お風呂場は脱衣場は広いが、洗面台を設置する場所はやはり鏡でもっと広さを出したかった。鏡が扉になっていて、中に物がしまえるものを選んだ。横の棚もセットなので、こまごまとしたメイク道具や歯ブラシのストックなど、色々しまえてとても便利だ。 25d254af-673a-441f-b827-2e99e4540c46bc85b8e7-0eb0-4fdc-a823-572a55b5af7f一番右の金具を押すと下の栓が閉まる。コンタクトをつける真理にはとても助かる。これまでは古いタイプの物しか使ったことがなかったので自分で栓を閉めてもゴムがゆるかったりして、コンタクトを失くしそうだった。 こういったちょっとした気遣いが新しいものにはつけられていてありがたい。  トイレは、元々、洗面脱衣所の中に扉があったが、廊下の方に扉を付け替えてもらった。  これは、例え夫婦二人でも、どちらかがお風呂に入っていると、トイレに入りづらいからだ。  廊下から入れるように、引き戸にして、少々面積は狭いが、壁紙の色などを明るくして、幅は狭いが、ものを置く棚もつけ、工夫して楽しんで入れるトイレを目指した。 b1bd3a17-84a4-4906-b08b-bfabe2638fd5  少しずつ最初のリフォーム業者の設計図よりグレードアップしたところ、当初の予定金額より200万円ほど上がってしまったが、満足のできる水回りになった。  打ち合わせの為、何度も、前の住居からこの新居の団地に足を運んだ。  実は住んでいた民間マンションから今の団地までは京王永山駅からは同じバス路線でバス停3つ目の場所にある。  歩くことが多かったが、前の住居からは全て上り坂になるので結構きつかった。  かといって、バスを待つには停留所3つだとバスの本数が少ないので時間がもったいないこともあり、丁度バスが来た時には乗って、バス停から団地内を通って、自宅のある棟にたどり着く練習もした。  団地は、住んでいる住人以外は殆どの場所がわからない。  新居の団地は多摩ニュータウンの大きな昔からの団地群とは、少し違う。  各団地に名前がついている3つの小さな団地の塊があり、バス停からは一つの別の名前の団地をまたいで新居に向かうのだ。  バス停が駅から遠くなるという事は、どんどん団地群の奥に入っていくという事だ。  新居の団地群はエブリスト貝塚という。バス停寄りの団地群はホームメゾンと言い、エブリスト貝塚を通り越した団地群はグリーンタウンという。  この中ではエブリスト貝塚だけがペット可の団地になっている。  元々鈴木家では猫を飼っていたので、当然、引っ越すときの条件はペット可でなければ困るのだが、その点でも、この団地の一部屋は条件に合っていたともいえる。  その団地群の周りにもさらに別の団地群が広がっている。  UR賃貸の団地もあれば、鈴木家と同じような分譲の団地も多く、どこに行っても団地しか見えないのだ。    小さな団地群とはいえ、エブリスト貝塚は300世帯程。一般的な5階建て住居、広さはまちまち。3階建て住居。他にメゾネットタイプになっている住居もある。 グリーンタウンは400世帯ほどあるという。見た所殆ど5階建て住居だが、一部高層の建物もある。  少し歩くと二件繋がったような二階建て住居もあり、どこまでがグリーンタウンなのかがはっきりしない。  ホームメゾンは一戸建て住居も含まれ、高層階の住居も、5階建ての住居もあるので正確な世帯数は未だ把握できていない。  団地でリフォームをする時には団地の管理事務所に届けなければいけない。   エブリスト貝塚は理事会がそう言った届け出を請け負っているので当然鈴木家の工事も届ける日が来た。        
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