引越し

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引越し

 いよいよ引っ越しの日がやってきた。  銀行での沢山の書類の手続きや、引っ越し業者の手配など、これまでの生活では真理がやっていたことを一郎は全部やってくれる。    前の結婚の時は、いろいろな雑多な手続きも真理がやっていたので、なんだか楽をして申し訳ないようだった。  ただ、引っ越しまでの準備の箱詰めなどは、さすがに一郎は仕事に行っているので、真理も頑張って行った。  再婚して最初に住んだマンションはそう広くはなかったのでお互いに最後に住んだ場所を引き払う時に大分物は捨ててきた。  それでも、2年も住んでいると結構物が増えているものだと思った。  一郎は、猫ケージをばらしたり、組み立てたりという力作業は引き受けてくれた。  以前、長野の真理の実家に引っ越した時、ケージやトイレを積んでいる引っ越しのトラックの到着が遅れたために、猫たちはキャリーバックに8時間も閉じ込められていたのだった。  今回は近場という事もあり、まずは猫のケージを作り、猫を刑事に入れてから荷物をどんどん搬入してもらった。  猫はケージに入っていれば怪我の危険もないので一安心だ。  後は、一郎と結婚するときに色々なものを置くのにパイプの棚を買っていたので、それをばらしたり組み立てたりするのも一郎がやってくれた。  一人では危ない時には真理が少しだけ支えたりして手伝った。  引っ越しの前には新居を全部拭き清めたが、これも一郎が一人でやってくれた。  引っ越しの日には、いろいろ買いそろえた物が届いたり、エアコンの取り付けなどもあり、それこそ大騒ぎだったので、当日の荷解きは、最低限生活に必要なものだけにした。  キッチンは真理が食器類をばらした。  キッチンのテーブルや食器棚などは前に使っていた物をそのまま使った。  炊飯器も電子レンジも再婚してから買いなおしたので新しかったし、冷蔵庫も買い替える気はなかった。    洗濯機もそのまま使った。    出るお金はせっかくの新居に入るので惜しみなく使ったが、使える物は当分の間は節約の為、そのまま使う事にした。  引っ越しの前には思い切って、真理の紙の本で、デジタルでも良い。と決めたものは全てブックオフに売りに行った。真理の蔵書は常にマンガ、小説を合わせて500冊は下らないのだ。独り暮らしから再婚する時にも結構処分したのだが、本はすぐに増えてしまう。  どうしても紙でとっておきたい本も整理たが、それでもかなりの数があった。  ブックオフは売っても二束三文だが、捨ててしまうよりは誰かが読んでくれた方が嬉しい。    洋服も整理した。広いクローゼットがあるので、引っ越したら、着る物は基本掛けて収納することに決め、その下に置く箪笥にはソックスなどの小物や部屋着など畳んでしわになっても差し支えない物を入れることにした。  再婚する前から、真理はもう仕事にはつかないと、一郎とも話し合って決めていたので、礼服以外のスーツはもういらない。  多摩市は半透明の袋に多摩市と書いて収集の日に出して置けば回収してくれるのだ。  布類は、まだ着られると自分で思うもの、タオル類などのダスターでも使える物を出す。下着類はさすがに燃えるごみである。  他人様が再利用できるものだけを出すのだ。  引っ越してからも、クローゼットに掛けながら、まだ衣類の仕分けをした。  結構いらない物を持っている。  この機会にと思って、衣類と本は大分処分をした。  真理は大学に入る時に東京に来てから実に12回の引っ越しをしている。  途中で、最初に飼った猫の病気で治療費が大変で、生活がままならなくなった時には一度実家の長野に帰ったりしていたので、猫を連れての大きな引っ越しが長野との往復で2回。その前にペット可のワンルームに行く時と、そのワンルームの建物内での引っ越しもあった。  いよいよ、今度で元気な間の引っ越しが最後かと思うと、ほっとする部分もあった。  実は、あまりにもたくさん引っ越しをしているので、むしろ慣れてしまい、何が大変なのかもよくわからなくなっている。  いつもは引っ越しの段ボールの処分が大変だったが、今回は一郎の三男家族が丁度引越しだったので、段ボールをそのまま全部持って行ってくれて大変に助かった。  ともあれ、必要最低限の食器類と、必要最低限の服と、その日に寝るための寝室を整え、後はなんとなく片付けていったという記憶しか残っていない。  それというのも、殆どの場所決めを一郎がして、一郎が片付けてくれたからなのだった。  真理はあまり片付けが上手ではない。それは決まった場所を作ることが上手ではないからだ。一人暮らしの時は洋服が入りきらなくなって、畳んだまま外に出ていたり、雑誌が片付けの日が来るまで散乱していたりと、結構散らかった部屋だった。  猫を飼い始めてからは、吐かれて困るものはきちんと片付けるようになっていたが、それでも、まだまだ散らかっていた。  新居では一郎がいろいろなものの置き場所を決めてくれて、そこに返しておけば部屋が散らかることはまずない。と言う状態を作ってくれていたので、その間、真理は棚を組み立てるのにちょっと持っているのを手伝ったりしたくらいだ。  この手間を惜しむと、結局色々な場所に物が置かれて迷子になるのだ。  真理ま元々がせっかちで、とにかく段ボールを早くほどきたいと思って、次から次へと出してしまうので、最初から片付かない部屋になってしまう。    一郎は根気強く、色々なものを丁寧に片付けて行った。  真理は自分の服の整理と、持って来た植木鉢を出すことは自分でしたが、それ以外の書類や、置き場所に困るものの定位置はすべて一郎が決めて、一郎が片付けてくれたのだ。  引っ越しはそんな感じだったので、慌てることなく、少しずつ、物をきちんと収めていった。  もちろん、今までとは違い、片付かない物を置いて置くスペースがあったので、ゆっくりとできたという事もある。  そうやって、徐々に片付けて、ようやく、本類を出す順番が来た。          
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