2人が本棚に入れています
本棚に追加
さいあく
私、吹野夏芽はあることを除いては至って普通の女子高校生16歳だ。大好きな彼氏と中学の頃からの親友をはじめ多くの友人に囲まれて順風満帆の高校生活を送っている。
そのあることとは、他人より嗅覚が何倍も優れていること。生まれつき匂いに敏感だった私は成長するにつれ鼻の良さは磨かれていき、今ではその人がどんな人物で先ほどまで何をしていたかすらも察せることができるようになった。別に困ったことも対して役に立ったこともないため特に気にしてはいなかった。
「なーつーめっ、おはよー!」
ポンっと叩かれた肩と同時に太陽のように明るい親友の心愛の声が聞こえた。心愛の甘ったるい香りはもう鼻について忘れられない。
「心愛っ!おはよう」
私たちは中学入学と同時にすぐに仲良くなり今では超仲良しと有名かもだ。心愛の方へ振り返るとやっぱり少し離れた場所に愛しい恋人を見つけた。
「蓮くん、おはよう」
「ん、あ、夏目はよ」
すぐに駆け寄ると眠たいのかトロンととろけた笑みで私の名前を呼んだ蓮に心臓がキュゥっと掴まれる。そして隣にいた心愛にも「おはよ」と甘い顔で微笑むものだから少し嫉妬する。だって最近2人の距離が近い気がするから。
「ね、蓮くん。放課後時間ある?」
「⋯⋯ごめん、用事ある」
蓮は困ったように眉をハの字にさせて俯いた。
最初のコメントを投稿しよう!