江東家の休日、少女の夢

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「あ…」 何気なく開いたファイルの中に、角が薄茶色く変色した画用紙が入っていた。 それは幼稚園の頃に、色鉛筆で描いた「私の夢」だった。 大きくキラキラした瞳。 茶色のウェーブがかったヘアスタイルにティアラが乗せてある。ピンクとブルーが交互に重なるドレス姿のお姫様。その周りには黄色いたくさんの星。 「そうだったね…お姫様になりたかったんだよね、私…」 あの頃の自分に申し訳ない気持ちになった。 幼いながらに思い浮かべていたキラキラとした大人の女性と今の自分は、真逆にいる。 私はそっと絵を撫でた。 ――ごめん。あなたが思うお姫様になれなかった。
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