急な変化

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急な変化

「京子さん、おはようございます」 月曜の朝――。 高知にそう挨拶され、思わず立ち止まってしまった。 出入り口付近でコーヒーを入れていた彼は、何食わぬ顔で私を「京子さん」と急に下の名前で呼んだのだ。 「何で…急に下の名前で呼ぶの…?」 うちの課で私をそう呼ぶ人はいない。 呼んで悪いという事はないけれど、急な名前呼びに戸惑った。 「いいじゃないですか、だって…寧々さんだって名前だし」 「寧々ちゃんは苗字が秋田だから。秋田さんと区別するのに名前で皆呼んでるの。私の事は…江東でいいから」 カバンを引き出しに仕舞い、パソコンを立ち上げる。 席に戻ってきた高知は、残念そうに「分かりました…」と言った。 親しみを込めてくれたのだろうと思うけれど、なんとなく気まずくて、訂正せずにはいられなかった。
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