急な変化

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正午になり、皆が昼休憩に入る。 私は母に作ってもらったお弁当を広げた。こうして母のお弁当を食べるのは、高校の時以来になるけど、変わらぬ美味しさとバランスの良さにいつも感謝している。 長野さんは外へ食べに行き、寧々ちゃんはいつものように他の臨時さんと食べている。高知は購買か食堂にでも行ったか…。 ふと出入り口に目を向けると、キョロキョロと部屋を覗く兵吾と目が合った。 「あれ? ひょ…桐谷、どうしたの?」 職場の外では下の名前で呼ぶのだが、仕事中は兵吾と言えど苗字で呼ぶようにしている。 過去に一度「二人は恋人同士」と噂をされた事があったからだ。変に勘繰られるのは面倒くさい。 「あ、こっちか。京子、この前は悪かったな~」 気にして呼んでいるのは私だけで、兵吾はオンオフ変わらない。私を見つけると、スタスタとこちらへ歩き、空いている隣の席に座った。 「飲み代払って貰っちゃったからさ、返しに来た」 そう言い、後ろポケットから財布を取り出そうとしたのを見て「別にいいよ」と止めた。 「まぁ、そう言うだろうなと思った。でさ、今度奢らせてよ。また飲みにでも行こうぜ」 「あぁ…まぁ、いいけど」 そんなやり取りをしていると、高知が席に戻って来た。兵吾がいることに一瞬、驚いた様子を見せるも、すぐに表情を戻して買ってきた昼食を黙々と食べ始めた。 「よし、じゃあまたな。連絡する」 泥酔状態を見られた事も知らずに、兵吾は高知の脇を通り過ぎて行った。
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