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「お二人って仲良いんですね」
こちらに顔を向けるでもなく、ボソッと高知は言った。
「まぁ…悪くはないけど。同期は皆こんなだよ。高知だってそうでしょ」
誰だって同じ年に入庁した同期はいるものだ。
そして同期だけの飲み会が開かれて親睦を深めたりする。
「…そうですけど。なんか、お二人は距離近すぎません?」
さっきから妙に突っかかって来るなと思い始めた。不機嫌そうに見える高知を不思議に思いつつも、問い詰める程でもない…。
「長い付き合いだから。高知も日が経てば、皆ともっと仲良くなれるよ」
高知は何か人間関係に悩みでも抱えているのかと思い、宥めたつもりだった。
けれども高知は納得がいっていない表情のままだ。
「…今夜飲みに行く? 何かあるなら話聞くけど」
「えっ?」
仕方なしに、先輩として後輩の悩みを聞いてやろうと誘ってみた。高知はとても驚いたようで目を丸くしている。
「20時くらいになると思うけど」
「行きます! お願いします!」
今度は満足気な顔をしている。嬉しそうな笑みに少しホッとした。人生相談はそこまで得意じゃないけど、私は彼より10も年上だ。それなりに経験はある…はず。
言っておきながら、恋愛相談だったらどうしようかと不安になった。人生において、そちらの経験は悲しいくらいに少ないのだ。
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