上司のアナタと後輩のキミ

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*** 「お疲れ様でした〜。お先失礼します」 「お疲れ様」 寧々ちゃんを始め、課にいる数人の臨時さん達が定時になり帰って行った。 彼女達は、生い茂った草地からヒラヒラと飛んでいく蝶のようで、職員だけとなった男所帯の空間は気だるそうな空気へと変わる。 何か用事がない限りは、誰も定時で帰る様子がない。 上司が残っていると下の自分は帰りづらい、といった心境もあるだろうが、何より仕事が山積みで区切りを付けないと延々に終わらない。 「あと帰るけど、特に何もないか? 皆も切りのいいところで帰るように」 穏やかな声で課長が周りの職員に声かけをした。 以前から職員の長時間労働が課題とされている為、役職が上の人ほど早めに退勤する。 課長が帰り、その後しばらくすると徐々に机の上を片付け出して「お先です」と他の職員も帰り始めた。 うちの「島」の係長、長野(ながの)さんも一度伸びをすると「俺も帰るぞ〜」と言って帰り支度を始めた。
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