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「江東、高知も早めに帰れよ。……出るぞ?」
そう言って、両手を前に垂らし幽霊ポーズをする。
「えぇ! 出るって…幽霊!? マジですか!?」
真に受けた高知が驚いた表情のまま上司を見送る。
ニタニタと笑みを浮かべ「お疲れ〜」と長野さんは部屋を出て行った。
「江東さん…まだ、残ります? 帰ります?」
「ん〜、どうしようかな~」
長野さんが帰ってからどれくらい経過しただろう。
気がつけば、うちの課は高知と私の二人になっていた。胸元まであるロッカーで区切られた隣の課には、まだ数人の職員が残っている。
節電のため蛍光灯が何ヶ所か消され、薄暗い雰囲気になっていた。怖がりな高知は、いつも最後の一人になることを嫌がる。
ソワソワとした様子でこちらを見てくる高知にフッと思わず笑った。
「分かった、帰ろう。ちゃんとデータ保存しなよ?」
「はい!」
安心したようにパソコンに向き直り、電源が落ちたのを確認しパタンと画面を閉じた。
私も同様に終えると、引き出しからバッグを取って、高知と共にエレベーター前に向かった。
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