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「高知、ごめん。信じてあげれなくて、ごめん」
感情の赴くままに伝えた。
青信号が点滅し始めて、私は急いで横断歩道を渡った。
電話の向こうでは、高知が黙っている。
私の耳には歩いているような足音だけが聞こえる。
その足音がピタッと止まると、彼の優しい声が耳に入ってきた。
「ん〜…何が? って感じだけど、まぁいいです。会えたんで」
駅の方へ顔を向けると、視線の先にはパーカーを着た部屋着姿の高知がいた。スマホを耳に当てたまま、いつもの笑顔で私を見ている。
私は通話も切らずそのままに駆け出した。
踵が痛い。切れているかもしれない。
それでも彼の元へと走った。
「わっ!!」
軽く躓き、また靴が片方脱げて、少し離れた所へ転がった。
「江東さん! 大丈夫!?」
その靴を拾い上げて、彼は私の前でしゃがんだ。
「はい、お姫様」
あの時のように肩を貸し、右足を靴へと運ぶ。
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