112人が本棚に入れています
本棚に追加
「痛っ」
擦りむけた箇所に指が触れて、思わず声を上げてしまった。踝を確認した彼が痛そうに顔を歪める。
「まだドラッグストアも開いてるし、手当てしましょ。俺の家、近いんで…来ます?」
「えっ…」
驚いた顔のまま、コクンと頷いた。
もうこのまま流れに身を任せよう。何かに背中を押されるように、そう思った。
高知の腰に腕を回し、右足を軽く上げたまま、支えられながら歩いた。脱げた靴は彼が持っている。
「お姫様抱っこ、する?」
歩き出して間もなく、本気か冗談か分からないような笑顔を向けられ、私は慌ててそれを拒否した。
「…情けない、私」
「情けないね〜。でも、そんな所も好きですよ」
まるで幼子をあやすかのように高知は言った。
その優しく柔らかな声に甘えたくなる。
彼の肩に頭をそっと乗せた。
気づいた彼がチラッとこちらを見て、嬉しそうに笑う。
最初のコメントを投稿しよう!