シンデレラは帰らない

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「痛っ」 擦りむけた箇所に指が触れて、思わず声を上げてしまった。(くるぶし)を確認した彼が痛そうに顔を歪める。 「まだドラッグストアも開いてるし、手当てしましょ。俺の家、近いんで…来ます?」 「えっ…」 驚いた顔のまま、コクンと頷いた。 もうこのまま流れに身を任せよう。何かに背中を押されるように、そう思った。 高知の腰に腕を回し、右足を軽く上げたまま、支えられながら歩いた。脱げた靴は彼が持っている。 「お姫様抱っこ、する?」 歩き出して間もなく、本気か冗談か分からないような笑顔を向けられ、私は慌ててそれを拒否した。 「…情けない、私」 「情けないね〜。でも、そんな所も好きですよ」 まるで幼子をあやすかのように高知は言った。 その優しく柔らかな声に甘えたくなる。 彼の肩に頭をそっと乗せた。 気づいた彼がチラッとこちらを見て、嬉しそうに笑う。
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