537人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
卒業
小学校の卒業式前日――。
六年生の教室はザワザワと落ち着かない。
「おーい、静かにしろー」
担任の大きな声が教室に響く。
「忘れ物はないか?机の中のものは今日全部持って帰れよ」
六年生の三学期は、あっという間に時が過ぎた。中学受験をする子は欠席が多くなり、受験をしない子も中学に向けて塾に通い始める。
地域の中学校の制服採寸があったり、新しい環境に向けての準備が着々と始まっているのだ。
終わりへのカウントダウン――。
そして、最後の授業が終わり、最後のホームルームが始まった。
「明日の卒業式は遅刻しないように。空っぽのランドセルを背負ってこい。帰りは卒業アルバムと六年間の思い出で重くなるはずだ」
「何それー。思い出に重さはないじゃん」
「だよねー。先生意味わからない」
「意味がわからなくてもいいんだ。六年間お世話になったランドセルをピカピカに磨いて来い」
「はーい」
まだまだ実感のない生徒達。けれど、時間は止まってはくれない。
この小学校からは、受験組以外は同じ中学校に進学する。だから余計に別れの意識が薄いのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!