卒業

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卒業

 小学校の卒業式前日――。  六年生の教室はザワザワと落ち着かない。 「おーい、静かにしろー」  担任の大きな声が教室に響く。 「忘れ物はないか?机の中のものは今日全部持って帰れよ」  六年生の三学期は、あっという間に時が過ぎた。中学受験をする子は欠席が多くなり、受験をしない子も中学に向けて塾に通い始める。  地域の中学校の制服採寸があったり、新しい環境に向けての準備が着々と始まっているのだ。  終わりへのカウントダウン――。  そして、最後の授業が終わり、最後のホームルームが始まった。 「明日の卒業式は遅刻しないように。空っぽのランドセルを背負ってこい。帰りは卒業アルバムと六年間の思い出で重くなるはずだ」 「何それー。思い出に重さはないじゃん」 「だよねー。先生意味わからない」 「意味がわからなくてもいいんだ。六年間お世話になったランドセルをピカピカに磨いて来い」 「はーい」  まだまだ実感のない生徒達。けれど、時間(とき)は止まってはくれない。  この小学校からは、受験組以外は同じ中学校に進学する。だから余計に別れの意識が薄いのかもしれない。
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