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一日目
午前十二時。
眠っていたのか、それとも気を失っていたのか。体の節々に痛みを感じながらゆっくりと目を開ける。
「眩し……」
覚えのない場所や状況で目を覚ましたというのに、何故か眩しさが感情を先行した。
「起きましたか?」
隣で声がする。眩しさに目が慣れぬまま薄目で横を見ると見知らぬ男が椅子に座っていた。
「あなたは何か覚えてますか?」
「いや、何も……」
ここに来た経緯、つまり意識を失う前のことは何も思い出せない。今はそれよりも、
「ここがどこで、今どういう状況か分かりますか?」
「いえ。自分もさっき目を覚ましたばかりで」
隣にいる見知らぬ男も自分と同じく、肘置きがあるタイプの椅子に座っている。椅子から滑り落ちなかったのはその恩恵だろう。そしてここはおそらくどこかの体育館だ。それも学校のではなく、県か市か地区かが運営しているもの。
懐かしい。学生の時はよく体育館で部活動に励んだっけ……。
「ずいぶんと呑気ね」
「え?」
隣からではなく前の方からだ。
「このわけわからない状況でよく感傷なんかに浸れるね」
「そんな言い方しなくても……。ここにいる誰にも分からないんですから」
目の眩しさはもうない。にも関わらず気付かなかったのは理解しようと考えるのに必死だたからだ。
「これで全員目が覚めましたね」
一、二、三、四……十。全員で十人だ。この古い体育館に男女十人が輪になって椅子に座っている。目が覚めるのは俺が一番最後だったらしい。
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