一日目

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 のちに知ることになる誰もの考えの相違。一つ一つ綻びが目に見え始め、その目的に気付いた時にはもう、そこにはいない。  ゲームに参加していたのは最初から……。  翌朝、体中に感じる痛みで目が覚めた。一応で布団があるとはいえペラぺラの安物、更衣室だから地面も堅いという熱悪な環境。そんな状況でも目が覚めなかったのは、やはり薬か何かのせいだろう。  十「起きたか」   十番はすでに起きていたらしく、布団の上で腕を組んで座っていた。   「……あ!」   まとわりつく眠気を一気に振り払う。  十「安心しろ。俺たちの方は全員いる」   八番、九番、十番、それに未だ無口を貫いている一番。確かに全員いる。   「じゃあ……」  十「多分な」   食べ物に何か混ぜられていたとしたら、あっちでも十番の作戦は不発に終わっただろう。ルール通りならまた一人……。   「早く見に行った方が……」  十「こんな状況だがそういうわけにはいかないだろう。とにかく、他の三人を起こして体育館に戻ろう。そこで待つ」   体育館で時計を確認すると、時刻は午前九時を少し過ぎていた。   律儀に、そこそこ健康な時間眠らせてもらえたものだ。謎な気遣いに贅沢を言わせてもらうなら布団ももっとちゃんとしてほしい。  八「はい」   「ん?あ、ありがとうございます」   椅子に座って手渡された水を飲む。普段なら何の味もしない水も寝起きなら美味しく感じ、惨めにも生きていると実感してしまう。   「……?」   ペットボトルの水だった。コップなんてないから直飲みするしかない。少なくなってきたペットボトルの水を口に含もうと軽く上を向いた時だった。   「あれは……?」   大したとこはない。だからこそ、それ以前を覚えていない。   勝手に天井のライトは一つだけ点灯していると思っていた。でも違っていた。   一つだけ灯りのつくライトを中心にカーテンのようなものが張られていて、天井の一部が遮られている。ライトの周り四方に、おそらく正方形の大きなカーテンが四枚張られているだけなので雑ではあるが。   まるで天井を隠しているみたいな……。  九「おい!来たぞ!」   その声で体育館の入り口の方へ無意識に視線が移る。女子たちがキョロキョロしながらこちらに歩いてきているところだった。   その数は一人、二人、そして……。  二「これで全員?他には?」  十「他?男の方は見ての通り全員いるが……?」  二「そう……」  六「ほ、本当に?七番が先に来てたりしてない?」  十「ああ。俺たち以外には誰も……」   その瞬間、この場にいる全員が察した。   薬か何かで眠らせられているとはいえ、誰も起こすことなくひっそりと、暗闇の中で鮮やかに。   そして、ルール通りに。
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