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中学生の頃は普通だったと思う。誰もがが想像する中学生のように。
だからこそか俺はいつも疲れていた気がする。家に親はいない。いるのは親戚という名札を付けた、俺からすれば知らない人間。感謝と罪悪感はあれど、俺にとってそこは家ではない。
人生において、時に、逃げることも必要だと誰もが言う。許容量以上に溜め込んでしまって、自分自身が壊れてしまったら元も子もない。
……そう、まるでこの世の全ての人間に逃げ場があるように言葉を吐く。
当人しか分からないことさ。自分一人では逃げられない人も、助けを求めることができない人だっているのに。
そう、例えば、
「……」
気分転換がしたい時にだけ一人で行く屋上。そっとドアを開けると、偶然彼女がそこにいただけ。会話などろくにしたことのないただ同級生の彼女。
俺も、ただ知っていただけ。
ドアの前で固まったままの俺に彼女が気付く。
何か言うべきか?それとも手を伸ばすべきか?……どの立場で?
彼女は、彼女のクラス内で虐めを受けていた。
「ねえ、見逃してくれない?」
放課後の屋上、二人だけのその場所で彼女そっとは呟いた。
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