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午後九時。
二「で、やるんでしょ?」
十「それ以外に方法はない」
午後九時になると、誰も何も言わずとも全員が自分の椅子に座っていた。
無数にある天井のライトのうち一つだけが点灯している。体面に座る人の表情がギリギリ見える程度の明るさで。
十「何か収穫があった人は?」
「……」
手を挙げる人はいない。
スクリーンに映し出された説明が一通り終わった後、各々が自由に動いた。この状況を整理する人、お腹がすいたからとご飯を食べる人、寝っ転がって休む人、助けを求めようと二階の開いた窓に向かって叫ぶ人。最後に起きた俺はできていなかったこの体育館内を散策した。もちろん、収穫はない。
十「仕方ない……このゲームに参加する人は?」
「……」
全員が手を挙げる。
十「本当にいいんだな?」
二「くどい。みんなやるって言ってるんだからさっさとしましょ」
八「まさか一生ここにいるなんてことは……」
十「それはないだろう。このゲームは長くても五日で終わる。その後のことは分からないが」
自分たちの決定で人が死ぬ。もしくは自分も死ぬ。テレビで見ている作られたモノではなく、後にも先にも味わうことはないであろう緊張感。仕方ない状況とはいえ人を殺したくはないのは誰だって同じはずだ。
十「そろそろ始めようか」
七「どうやって決めるの……?」
十「提示された通りに多数決だ。せーので鬼だと思う人を指さそう」
後腐れなくこのゲームを終える方法。それが俺の手の中に一つだけある。
「あの、いいですか?」
九人の視線が一気に俺に向く。
二「何かあるわけ?」
威圧的な口調だが俺の提案には泣いて喜ぶだろう。何のリスクもなくゲームを終え、願いも叶えてもらえるのだから。
「鬼がいなくなればゲームが終わるんですよね?だったら鬼が名乗り出るのはどうでしょう」
普通のゲームなら受理されることはまずない提案。
九「ちょっと待てよ。鬼に何のメリットがあるんだよ?」
鬼にメリットなんてあるはずもない。普通の鬼であるのならば……。
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