一日目

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 二「いいんじゃない?手っ取り早いし」  十「そうだな」  九「は?いやだから……」   九番を含め、何人かが反対しているように見て取れるけど、きっとそうではない。このゲーム性の欠片もない意見に困惑してるだけだろう。  十「ああ。だから鬼は名乗り出なくても構わない」   「一応やるかどうかはみんなで決めたほうが……」  十「いや、どんなやり方であれみんなで決めれば自然と鬼は透ける。九番の言った通り鬼にメリットがないからな」   いい方法だと思って勝手に早とちりしていたが確かにその通りだ。  十「鬼に自ら名乗り出てもらおう。さっきも言ったが、強制ではない」   よくあることだ。例え死にたいと思っていても自殺はできずに、事故などの不意を願うことは。でも生涯でその不意が訪れることはほとんどない。   「……」   名残惜しさなんてない。自分一人じゃ持て余した命だ、むしろ感謝すらある。  十「自分は鬼だという人はいるか?」   最初で最後の慈善の心。と見せかけたただの自己欲求。   でも、これでいい。これで……      は?   眼前に広がる理解のできない光景。挙げた手も開いたままの口もそのままに、誰もの視線が誰もの顔を行き来する。   鏡に映し合わせたような(とお)の同じ顔。  二「ちょっとどういうこと!」  九「なんでだよ?」  七「もうわけわかんない」   怒り、疑問、嘆き。この状況に徐々に感情が戻る。それぞれのように見える感情もその根源はみんな同じで、  十「この質問になんでが手を挙げるんだよ!?」   それは紛うことなく、驚きだった。
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