一日目

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  誰もが驚きを表情に出している中、一人だけは違っていた。九人の間抜けな顔を小馬鹿にするように誰にも見えないようにひっそりと、口角を吊り上げた。  「……」   このゲームのルール上、鬼は一人しかいない。そうでなければゲームが成立することはなく皆ただ死ぬだけとなる。だからこそ「鬼を見つけ出す」というクリア条件が設けられているのだ。それ以外にルールなんてない。  七「ど、どうするの?もうそろそろ一人に決めないと……」  八「でも誰に?」   俺はこの目で確認した。指示された通りに胸の所に縫い付けられた、番号の振られた布の糸を切り、その裏を。全員がそれぞれ自分の布を。   俺の布には間違いなく書かれていた。「鬼」という文字が。その布は今もこのポケットに入っている。   待てよ?あの時……。  十「仕方がない。とりあえず今回は自分以外の誰かに投票しよう」  六「それしかないね……」   思考が途切れ、よくない現実に戻る。それをしたくないからと、一見無茶な提案をしたというのに。まさかより混乱を招いてしまうことになるとは。  十「せーので行く。みんな準備はできたか?」   もしかしたら自分の選択で誰かが死ぬ。そんな緊張がもう一度走る。   気にするな。これは仕方のないこと。そう、割り切れたら……。  十「せーの」   「……」   それぞれがぞれぞれの指先を目で追う。誰が誰に指しているのか、自分に票は入っていないか、誰に何票入っているのか、その結果、選ばれたのは誰か。   沈黙は少しの間だけだった。バラバラに散っていたそれぞれの視線は徐々に収束し、やがて十人のうちの一人に行き着いた。それは、  五「僕……」   「……」   やるせない。   ここで目を覚ましてすぐ、何も分からない状況で声をかけてきてくれたのは彼だった。そんな彼が選ばれて俺が思ったこと。情けなく、惨めな人間の心理。   俺は彼を指ささなくてよかった……。  九「決まった、んだよな?これからどうなるんだ?」  二「知るわけないでしょ」   人間なんてみんなそんなものだ。自分以外なんて。
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