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「鶏つくねバーガーもおすすめです。ソースはおろしポン酢とゆず胡椒をお選び頂けます」
この状況で最後まで言い切った、店員の鑑だ。
さすがに男も腹が立ったのか、拳銃を仕舞って包丁を取り出した。
入れ替えたことで拳銃がオモチャであると自白したようなもんであるが、その輝きから今度は本物の刃物だと解る。
それによって店内はざわつき、青年は青ざめる。
「お、落ち着いてくだしゃい」
おまえが落ち着け。
「うるせえ! いいから早く金を出せよ!」
怒号に青年は慌ててレジに手を伸ばす。けれども、青年はぴたりと動きを止めた。
「なんだよ。早くしろよ」
いらついて怒鳴るも、青年はあわあわとしているだけで、一向にレジに手をつけない。そこで俺は悟った。
こいつ、もしかして……新人か!? 案の定よく見ると、左胸の名札にはわかりやすく初心者マークのステッカーが貼られている。
おそらく、まだレジの使い方を教えてもらってないくらいの新人なんだな。青年は困ったようにきょろきょろして、目に留まった女性店員に助けを求める視線を送った。
けれど、女性店員はへたり込んだままガタガタと震えている。当然の反応だろう。
さて、新人くんはといえば──レジを開けられない事を説明したそうな表情だが、果たして男はそれを信じるだろうか。
それよりも、説明したことで男が女性店員に矛先を向けたら大変なことになる。新人くんも、それには気づいたようで口をつぐんだ。
悩み抜いた新人くんは、足早に奥に駆けていった。
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