タンタの極夜祭

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 カルカナデでそうしていたように、ゲンゴロは旧語で祝詞を唱えた。 【暗き道に陽を通らせ、光の恩恵をもたらしたまえ】  勇者と屋台の男はキョトンとした。タンタには祝詞も残ってないらしい。苦い気持ちで啜る。 「おっといけない、ラターリァやラターリプの中にマッテンの実が入っています。噛んだら正直に『辛い』と言ってください、もう一杯当たります」 「えっ、すごいのだ! でも、辛いのだ……?」 「辛いです」  ゲンゴロは渋い顔をした。  カルカナデでは、極夜明けにラタリァを飲み、マッテンの実を噛んで懺悔をする。身も心も禊いで、明るい春の到来を祝うのだ。アーデルナーテにも似たよう伝統があったはずなのに、テルテに占領されて伝統が歪んだのか。  ころり、と口の中に甘い粒が入り、ハタタカがニッコリした。 「すごく甘い実なのだ」 「皮だけな。噛むなぁやめとけ」 「大丈夫なのだ」  カリッ。ボン! 「⁈」  火がついたように辛味が溢れる。辛いと言うか痛い。残ったラターリプを飲み干すが、辛味は全然引かない。舌がビリビリする。 「はっ……かっ、かっ、かりゃいのら!」 「はいよっ!」  店主はすかさずラターリプを渡した。あっという間に飲み干す。今度は、マッテンは舐めるだけ。 「ラターリァおいひいのだ」 「ラタリプ…ラタァリプな」 「勇者様のお口にあってよかった。もう一杯サービスしましょう」 「えっでも」 「いいのいいの。ウチは勇者様には恩があるの。そいつの代わりに受け取ってくださいな」  店主はもう一杯、ハタタカに渡した。 「勇者に恩……?」 「ええ。評判悪い勇者だけどね。人殺しのカンクロ」
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