タンタの極夜祭

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 あちこちに吊るされた雪のオブジェ。灯りを受けて煌めいている。  極夜祭が始まったタンタの大通りには、普段の街の人口より多くの人間が来ていた。 「タンタ極夜祭、来たことあるのか!」 「昔な」  今をときめく若き勇者・ハタタカとその下男ゲンゴロは、魔物退治の帰りにタンタの街に立ち寄った。十歳のハタタカには、北国も極夜祭も初めてだ。沈みっぱなしの太陽を呼び戻す祭。どこもかしこも賑やかで楽しそうだ。  だが、下男の表情は暗かった。 「まさか、まだやってるたぁ思わなんだ」 「そうなのだ? 始まった頃に行ったのだ?」 「ああ、多分そうだろう」  ハタタカは先程もらったパンフレットを見た。今年で百十二年、とある。  下男ゲンゴロは、ただの白髪頭の若者ではない。百年以上前に勇者の責務を全うしたが、それ以前の罪により封印されていた、カンクロという男だ。今は下男ゲンゴロとしてハタタカに協力しているが、彼の知識・記憶のほとんどは百年以上前の出来事になる。 「昔も楽しかったのだ?」 「いや」  ゲンゴロの、夕焼け色の瞳が曇った。 「心底恐ろしくて……震えたよ」
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