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「先生」なんて呼ばれて持ち上げられて、自分の無能さに気づかなかった罰が今来てるだけなんだけどな。
それさえまだ理解できてないんだね。
「もし僕が雨里や他の連中を殺しても、お前はタダじゃすまないんだってちゃんと覚えといた方がいいよ」
一から十まで説明しないとわからないみたいだから、面倒だけど教えてやる。
僕の方が「教え子」のはずなんだけどね。
「『先生』ならもちろん知ってると思うけど、今のネットの人たちってすごいんだって。──家族も無事だといいねえ?」
「……か、家族、は」
目の前の男の声と膝が震えるのに、勝手に笑いが込み上げて来た。
抑えるのに苦労するよ。
「もう一度言うね。『お前は、自分の、仕事を、しろ』。──わかった?」
囁き声はそのままに、僕は役立たずのでくの坊に念を押す。
今野が引き攣った顔で頷くのだけ確かめて、僕はカッターの刃を収めて右手を下ろした。
膝も口元も震えるに任せるしかできない教師を置き去りに、僕はその場を立ち去る。
家に帰って、仕事から戻るお母さんを迎えるために。
~END~
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