反撃

1/6
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
(とおる)! どうしたの、それ……!」  玄関を開けた僕を見たお母さんの、悲鳴のような声。 「お母さん、仕事は?」  しまったなあ。  まさかお母さんが、この時間に家にいるなんて思わなかった。 「この間、日曜に半日出たから午後は代休なのよ。……それより何があったの!?」  僕が着ている薄い青のシャツの前裾が、血で汚れている。ハンカチを巻き付けた左手も不自然だよね。  に突き飛ばされて当たった窓ガラスが割れたから、手の甲を切ったんだ。 「ちょっと、クラスのやつに……」 「誰に何をされたの!? 徹、お母さんには教えてちょうだい。たった二人きりの家族じゃないの!」  それを言われたらもう逃げられないよ。  お母さんにとっての僕も、僕にとってのお母さんも、何よりも大事な唯一の『家族』なんだ。  無視も嫌がらせも別にどうってことなかった。強がりなんかじゃなくて本当に。  どうせすぐに飽きるだろう、ってこっちの方こそ無視してたんだ。耐えてた、って意識は全然ないな。  ──そういうところもあいつには気に食わなかったのかもね。一人じゃ何もできないやつには。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!