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第一章 桜吹雪に包まれて
私、 姫井六花(ひめい ろっか)はよく、人に
「六花って冷めてるよね。」
と言われる。
冷めている、と言っても人に冷たくした覚えはないし、唯一の存在だった兄が亡くなってからも態度を変えた記憶はない。実際態度の問題ではないらしい。
「どういうこと?」
と聞けば、
「存在が今にも消えそうな感じ?」
「目が死んでるんだよねー。」
「地味じゃないけど、気配がないというか・・・。」
要するに存在感がないらしい。
現に今新学期早々学校をサボってお気に入りの丘に来ているが、数は少なくはないと自負している友人たちからも、学校からも連絡は来ない。
それでもいいと思っている。だって、私を本当に見てくれる人は、もう死んでしまったから。
数年前の冬のことだった。
15歳離れている父のような存在だった兄、柊夜(しゅうや)が病に倒れた。元々病弱だったから病には気をつけていたはずだった。
その日、私は一人、無駄に広い日本家屋の私の家の、正確には兄夫婦の家の縁側に座って梅と空を眺めていた。その時の気持ちは覚えていない。ただ、寒々しく梅が咲き誇り、刺さるように空が晴れ渡っていたことだけを覚えている。
しばらく一人でボーっとしていたときだった。
「六花!六花!早くお医者様を呼んでっ!」
いつもは落ち着いているキャリアWOMAN代表みたいな義姉が、慌てていた。
私はとっさに(兄さんになにかあった)と察し、近くに住むもう今は隠居している医者を呼びに草履をかけ、走った。
が、数日後、兄様は私と義姉に看取られて亡くなった。
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