第一章 桜吹雪に包まれて

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唯一の存在を失った私は兄の後を継ぐかのように話し方も変えた。 ちょっと乱暴な、レデイースっぽい雰囲気から、お嬢様風のファッションに変えた。 親族にも、 「柊夜の女の子バージョンね。」 と言われるくらいに。 よく食べるものも変えた。 前はマカロンだったが、兄の好きな食べ物であるモナカになった。 いわゆる陰膳と言うやつだ。  兄の好きな花は、桜だった。 今、私は兄が好きだった、桜に包まれている。 オフショルダーのシフォンワンピースを身にまとい、ブランド物の大きめのカバンを持って。 兄が好きだった桜は、私の心を優しく包んだ。 私は、そっと目をつぶった。その時だった。 「行ってきな。」 そう、兄に似た声が聞こえるとともに突然の浮遊感に襲われた。 そのまま私は意識を失っていた。
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