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しぶしぶを装い、彼と共に部屋を出る。
笑顔で対応してはいけない。
彼を調子づかせるだけだ。
素のままで過ごしていたら、
いつか彼に気づかれてしまうかもしれない。
楽しそうにしている彼の斜め後ろで、
その姿に思わず緩みそうになる頬を抑える。
すでにこれが日常になりつつある、
そんな俺は三宮与だ。
「……で?どこに行くんだ?」
「まずは、そうだな……トイレにしよう!」
ここから一番近い所だし、と彼は言った。
「どんな噂なんだ?」
「えっ、与知らないの?!」
「まあいいや、教えてあげようじゃないか!
あのな、この寮の1階の大浴場内のトイレ
そこの右側の個室にはあの子がいるんだ」
……誰が居るって?
「どの子?」
「あの子!」
「どの子だって?」
「あの子だって!」
何度問うても、同じ答え。
だから誰だ。
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