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「……別に風呂に入りたい訳じゃないのに……」
ふくれっ面で千秋は呟く。
俺の予想通りに、大浴場には入る事が出来なかった。
ブツブツ言っている千秋の手を引き、予定通りに食堂へ向かった。
各自の食事を乗せたトレイを持って空席を探していると、クラスメイトに手招かれる。
「こっち空いてるよ」
丁度2人分。
千秋と並んでその席に座った。
「んで千木良、お前なに機嫌悪そうなの?」
顔にそのまま表れている不機嫌さに、俺以外の奴も気づいた。
「トイレのさー、あの子を見に行こうと思ったのに追い返されたー」
「ああ、あの子かーまあこの時間じゃあな」
俺が知らなかっただけで、トイレのあの子というのは有名らしい。
「食べ終わったらそろそろいい頃だろうから、また出直せばいいだろ?」
慰めるようにクラスメイトは言う。
千秋は、それもそっか!と一気に機嫌を直した。
……単純すぎるだろ。
そして遊ぶように食べていた箸の動きをまともなものにし、勢いよく食べ始めた。
「……早く食べ終わっても、
時間は変わらないからな?」
解ってはいるだろうけど、念の為そう言ってみる。
「…………そうだね」
途端にスピードが落ちて、言ってよかったと俺は思った。
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