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「で、あの子って一体どういう話なんだ?」
誰でもいいから、詳細を教えてくれないだろうか。
「三宮は知らないの?」
「でもまあ、とにかく行こう!」
しかし何故か誰も教えてくれない。
千秋はといえば、教える教えないどころじゃなく、嬉しそうににやけてカメラをチェック中だ。
きっと俺の質問は聞こえてさえいないんだろう。自分の世界に没頭中。
そうこうして、大浴場へと到着。
「あ、ゴメン。俺トイレ行きたい」
とりあえず脱衣籠を確保しようとした所で、俺は皆に告げた。
「え?行くの?今?」
「っつーかトイレのあの子の事で来たんだろ?」
大浴場の近くには他にトイレは無く、
この中のトイレへ入るしかないだろう。
「一番に入りたいの?それとも普通に尿意?」
クラスメイトの内の1人がそう尋ねる。
後者だと答え、周りには他に人も居るし、別に暗かったり嫌な雰囲気を醸し出している訳でもない。
ごく普通のトイレにしか見えないそこへと足を進めようとする。
「いや与、まっ」
千秋が何かを言おうとして、それを他の奴が止めた。
「ほらほら、早く行ってきな」
「あの子に会えたら教えてね!」
「……気をつけろよー」
口を塞がれてもがいている千秋が気になるけれど、致し方ない。
誰よりも先にトイレに足を踏み入れたい彼の気持ちは解る。
けど、たまには諦めてもらおう。
俺はトイレへ繋がるドアを開けた。
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