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一家全員が集まる夕食の席。今夜は久しぶりのすき焼きだった。
「やったー! すき焼きだ!」
石上家の場合、すき焼きはごちそうの部類に入る。月呼の弟たちはこぞってよろこんだ。月呼も高級肉に心が踊る。
「今日はあんたたちに大事な話があるの」
母の空美が言った。空美が自分の子たちの前で改まって話すのはめずらしい。ごはんを食べることに夢中だった、月呼を含めた子ども全員の顔が上がる。
「お父さんの会社、倒産することになったから」
空美が淀みなく言った。父親の睦洋は否定せず、うつむいている。
「と、倒産!?」
月呼は動揺した。十年前、一家が広島県から移住し、両親がパン屋をはじめて以来、それなりに順調だと思っていたからだ。現在、店は二店舗まで拡大している。経営がうまくいっていないとも聞いておらず、両親が大変そうな様子もなかったので、月呼にとっては寝耳に水である。
「父さんの会社が倒産」
末っ子の詞央が言った。小学五年生の彼はことの重大さがまるでわかっていない。
「詞央、なにもおもしろくないよ」
今それを言うのは不謹慎だと、長男の量汰が注意した。彼はサッカーひとすじの高校二年生である。
「なんで倒産するの?」
三男の鞘人が両親に聞いた。中学一年生の彼は長男の量汰と同様、毎日サッカーの練習に明け暮れている。
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