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 1  レムリアは資料に目を通していた。部屋は明かりをつけていない。経営者は変わり者が多いと言うが、レムリアも例外ではなかった。変人エピソードを数多く持つ彼は、暗い場所を好むというのがいちばんにあげられる。  ノートパソコンから漏れる光が彼の顔を照らす。日本人離れした彫りの深い顔立ちなのは、西洋の血が入っているから。顔じゅうに刻まれた深いしわは、彼の経験がいかに豊富なのかをあらわしているようで、大人の魅力を増していた。  レムリア・ゲーム運営事務局は定期的に会議を行っている。その際、局員はだれも被り物をしない。  レムリアの意向により、局員は暗がりの中で話し合う。 「棚原前沙は仙敷侑加にひとめぼれだったようですね」  レムリアのとなりの席に座るバールバラがしゃべった。会議の際、レムリア・ゲームの参加者については本名ではなくコードネームで呼ぶ。 「ファースト・インプレッションは大事だ。ひとめで好きになるというのは大きい」 「しかし、棚原前沙好みの容姿の男性をどう探し当てたのですか? 彼女が恋愛において異性の容姿を重視するというような情報はなかったはずです」 「ただ、美男子をあてがっただけだ。それをもともとの好みだと、棚原前沙は錯覚を起こしたのだろう。私はそういう恋をいくつも知っている」  レムリアの問いに、その場は少しざわついた。
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