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言って、わたしはそっと指で女の子の犬を撫でてあげる。つぶらな瞳を介して、誰かがわたしの目覚めを祝福してくれている。そんな想いが胸の内に広がっていった。
「月愛……」
「……ん、なに?」
「わたし、リハビリ頑張るね。もう一度、昔みたいに戻れるよう頑張るから」
「うん……また少しずつ、頑張っていこうね、陽愛お姉ちゃん」
そう言って月愛は目尻に涙を浮かべながら微笑んで、大きく頷いた。
わたしはそっと、手にしていた人形を胸に抱きしめた。
そこから感じる想いを確かめるように。誰かがくれた優しさに、祈りを返すように。
ありがとう、と……ここにはいない誰かに向けて、わたしは心の中で、そっと呟いた。
何度も、何度も、ありがとう……と繰り返した。
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