前菜

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前菜

 ウエイトレスの勧める酒は聞いたことのない銘柄であったが、長期間禁酒状態におかれた取材班にとっては、格別の喜びであった。  そして、次々に運ばれてくる料理もまた、見たこともない創作料理である。 「フェンリルの香草漬けソテーです」  ウエイトレスの説明を聞いても、食材から料理のイメージはピンと来ない。  しかし口に運んだ肉には、香草の爽やかな香りでしっかりと弱められていたが、以前どこかで嗅いだ匂いの気がした。どこで嗅いだのだろう? そんな思いを巡らせているうちにも、永らく携帯食で痩せ細った食欲は刺激され、出された料理はみるみる内に平らげられてゆく、そしてメインディッシュの時を迎えていた。 「うん、悪くはない。しかし、これだけでは珍しい食材を上手く調理しているだけだな、三つ星には足りない気がする……」  経験豊かな隊長の辛口レビューに、それぞれに専門知識を持つ隊員たちも納得の相槌を打った。
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