メインディッシュ

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 食べない選択肢は、はじめから無かった。この奇妙なデザインの衣装に着替えたときから頭は冴え渡り、湧き上がる食欲が満足する事はなくなっていた。前菜のときから、もっと美味しい料理を口にしたい欲望に駆られていたのである。  この若く白い柔らかな肉を思う存分味わいたい、この美しい肌に包まれた内臓を思う存分(すす)りたい。この鍛え上げられた四肢にかぶり付きたい。そんな耐え難い欲望は、スタッフ全員同じであった。  全員の視線が隊長に集中する。  隊長は、いつもの冷静さで、何もない空間を見詰め続けるセリカを選んだ。全員の喉が鳴った。あの熟れきらぬ少女の肉体を口に出来ると思うと、背筋から全身にわたって電流が流れた、全神経はふるえ脳も快感に打ちふるえていた。  声なき声に何かを感じたセリカが、(かぶり)を振り暴れ始める。するとジムが、残された感覚、触覚から愛するセリカの異変を感じ暴れ始めた。  マーク二世は一瞬たじろいだが、諦めたように、またうなだれるのだった。  隊長は、ジムも選ぶ。二人は共に調理場へと運ばれていった。  メインディッシュは、日本でいえば活き作りか姿作りであろう。  調理場で下処理されたセリカとジムは、死なない最低限の内臓と頭部を残し、二人テーブルに並べられた。まるで、結婚式のように――
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