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ガーニムの本懐と、ファジュルが思い描く未来
かつてガーニムは国一の剣の使い手と評されていた。
今でもそのはずだ。こいつらよりずっと強い。
裏切り者どもを蹴散らして、俺が国王であると今一度知らしめてやる。
まずはファジュルから殺そう。
ファジュルが反乱軍を決起なんてしなければ、王国軍から裏切り者が出たりなんてしなかった。
全部ファジュルが悪い。ファジュルが、アシュラフの子が。
ガーニムは剣を振るい、ファジュルに振りかぶる。ウスマーンとアムルがそれを阻む。
ぶつかり合う剣が耳障りな金属音を立てる。
何度も、何度も。
渾身の力で叩き込んでも、アムルが刃を剣で受ける。最下級兵のアムルが、国最高の剣士であるガーニムと拮抗するなんてあるはずがない。
あるはずがないのに、アムルを斬り伏せることが叶わない。
ガーニムたちが戦いを繰り広げる後ろで、シャムスがマッカのもとに走った。
「マッカさん。あなたはここにいてはだめ。逃げて」
「ワタシはガーニム様の妻。夫をおいて逃げるなんてできません」
「……わからないわ。あの人に殺されそうになったのに、それでも夫婦だというの?」
シャムスがマッカを逃がそうと手を引くが、マッカは首を左右に振ってガーニムを見る。
「姫様のお心遣いを無碍にして申しわけありません。神の前で誓った気持ちに嘘はないんです。ガーニム様はワタシのことを人質だというけれど、ワタシは……」
「ふ、ははははっ。人質でなければ同情か!? 俺を憐れんでいるのか!?」
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