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みんなが喜んでいるなか、外に続く道がひときわ騒がしくなった。
「おかえり」「やったな!」「ありがとう!」と誰かをねぎらう声がそこかしこから飛んでいる。
期待に胸が踊る。人々の輪が割れて、ルゥルアの前に道ができる。そこを待ち人がかけてくる。
「ルゥ!」
「ファジュル!」
ファジュルが両手を広げ、ルゥルアを抱きしめる。ルゥルアもファジュルの背をぎゅっと抱く。
温かい。触れ合う肌を通して鼓動の音がしっかりと聞こえる。
ファジュルが生きている証だ。
嬉しくて涙があふれる。
「ファジュル、おかえりなさい。怪我はない?」
「ただいま、ルゥ。俺もみんなも、かすり傷程度だ。……それに、ガーニムも」
ガーニムの名前が出で、まわりにいた人たちが耳をそばだてたのが感じ取れる。
「どう、なったの?」
「玉座を退いてもらうことに決まった。イスティハールの家から除籍したから、もう彼は王族ではない。平民だ。ガーニムに子が生まれても、その子に継承権がいくことはない」
継承争いで両親と祖父を失ったからこそ、ファジュルは余計な争いが起きる前に取り決めをした。
「良かった。ファジュルが殺す道を選ばなくて、わたし、なんだかすごくホッとしているの」
ガーニムがスラム救済の法案を無かったことにした。だからスラムは荒廃したままだった。
だからといって、ガーニムを殺したところで、貧民が全員裕福になるわけではない。
「……マッカがガーニムとともに有りたいと言ったから。彼女が支えているなら、ガーニムはもう無謀なことはしないと思う。ウスマーンは複雑そうだったけれど、妹が自らの意志で決めたのなら引き離すことはできないって」
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