82人が本棚に入れています
本棚に追加
私はピンク生地に梅の花の柄の着物の裾を翻し、立ち上がった。自分の部屋へ戻るふりをして、調理室のほうへ向かう。トメと湯江に気づかれないよう、隠れながら向かった。(調理室に、勝手口があったわ!)
絨毯が敷かれた廊下をしゃなりしゃなりと歩く。調理室からは、何やら洋食を作っているらしき香りが漂ってきた。広い調理室では、夕飯の準備に取り掛かっている。六人くらい居た。腕のいい調理人がミルクを使っている。何かのコキールだろうか。
「あ、お姫様いかがなさいました?」
私は食べ物が欲しくなった時、よく調理室へ向かう。そこで何か甘いものを頂くのだった。
「甘いものが欲しいんですよね」
女性給士さんが言う。
「そうなの。何かないかしら?」
「分かりました。ババロアというかムースであればすぐにお作り致します」
料理長は、冷蔵庫の中から何かをお出ししていた。
(さて、今だわ)
最初のコメントを投稿しよう!