恋心とうらはら

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「こんなところで、お姫様が何をしておられるのですか」  この方は、河白むね子嬢との縁談の話もあったようだ。しかし、河白家は侯爵。同じ華族同士といえど、家の格が違う。むね子嬢のお母様がこの方に揶揄めいたことを言い、結婚を諦めさせた。半ば、沢野子爵はむね子嬢に惚れていたという話は母から聞いていた。だから断られた時、大きく落ち込んだとか。 「いえ、何も」  この方は上流思考が強く、どうにかして這い上がろうと自分より上の階級の令嬢にどうにかして、縁談の話を持ち掛けてもらおうとコネを使い、図々しい行為をされていた。しかも婿養子希望という、更に図々しいことの上乗せだ。 「伯爵令嬢が一人で遊び歩いてはいけませんよ。どうやって屋敷を抜け出して来たのか。私が家までお送り致しましょう」  そしてニヤリと口角を上げるが、卑しくうちに媚びを売ろうとしている魂胆が見え見えだった。
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