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礼を言うと「呑気なこと言っている場合ですか!」と、中田さんは強い口調で私を叱咤した。
「こんなところで何をしてるのです?」
私は親に叱られた子供のように、しょぼんと下を向いた。中田さんは見透かしたように「ははーん」と口に漏らした。
「侯爵のお姫様に頼まれたのですね? 私の後をつけてほしいと」
頭のいい帝国大生。勘も良いようだ。図星だけど、少し違う。私も彼のことを知りたいと思った一人だ。あのむね子嬢と男の人の趣味が同じとは。
「おや、図星のようですね。貴女は少し高飛車なところもあるお姫様だと思っておりましたが、しおらしいところもあるようですね」
その言葉にはカチンときたが、反論する余地は私にはなかった。半分当たっているのだから。
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