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半分、違う。それよりも、あの帝国女子師範学校の女子学生のことが気になった。遠くを見ると睨むように、彼女はこちらを見ている。
「あの、恋人の方がお待ちですわ。助けて頂いてありがとうございます。どうぞ、恋人のところへ行ってあげて下さい」
これ以上、迷惑はかけられないと思った。むね子嬢にはこれで報告することが出来る。
「いえ、彼女には事情を話してあります。一応、私、書生もお付きの者の身として、旦那様に任されております。お姫様を守る義務があるのです」
そうは言っても、あの彼女の不満気な顔を見るのは切なかった。申し訳ない気持ちが溢れる。
「逢瀬を邪魔して申し訳ありません」
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