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「あら、貴方、河白様のお姫様に気に入られたの?」
「そのようでございます。で、あのお姫様に私のことを調べて欲しいと、昭子様に頼んだそうで。仕方なく昭子様は私の後をつけたのですよ。すぐに私が昭子様の存在に気づきましたので、無事でございます。どうか怒らないでやって下さい。相手は侯爵。侯爵様の言うことに逆らうことなど出来なかった筈ですよ」
「まぁまぁ、それもそうね。じゃぁ仕方ないわね」
母の顔からは怒りの色はすっかり消えていた。私は不満を感じた。少々、中田さんには甘いのではないだろうか。
(父も母も何ゆえ、中田さんを贔屓するのかしら)
小鼻が膨らむのをグッと抑えた。
(中田さんってば得な性分だわ)
今度は違うことで心に苛立ちが増す。そんな中、中田さんは「失礼します」と、去って行った。きっと、あの彼女の元へ向かうのだろう。
「で、むね子様は、本当に中田さんが気に入ってしまったの?」
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