恋心とうらはら

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 母に問われ、「そうなのよ」と私は肯定した。 「今日もずーっと、中田さんのことを根掘り葉掘り聞かれたわ。一目惚れしたみたいね」   自分の心を隠すように、私はまくし立てた。 「うーん、そう。でも仕方ないけれど、むね子様の叶わぬ恋ね」  母は苦笑いをして、私の顔を眺めた。 「え?」  今日は色んなことが起こる日だ。事態がつかめないでいると実はね。と、母は畏まった顔をした。 「むね子様は、お輿入れがお決まりよ」 「え? どなたに?」  やっぱり実らぬ恋。だから、私が言ったじゃないの。と、むね子嬢に突っ込みたくなった。
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