むね子嬢の婚約パーティ

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 私が車が苦手な理由は、酔いやすいから。今だって揺れてちょっと気持ち悪い。けれども、ほとんどの令嬢が学校へ行く際は、車であることが多いため、学友にも「伯爵様なのに何故人力車なの?」と言われていた。そろそろ私も、車での通学に切り替えたほうが良いのかもしれない。 「でも車は苦手ですわ」  上下に揺れたり横に揺れたり。しかし、私は自分のパーティドレスに満足していた。桃色を基調とし、肩の二の腕までのロングスリーブに、Aラインシルエットのドレスを身に纏っていた。  そうこうしているうちに、車はむね子嬢の自宅へ到着。門の前は、銀色の柵で囲まれていた。うちとはやはり格が違った。一万五千坪の敷地内に、地上三階建ての洋館。その奥に和館があった。レンガ造りの西洋建築を見て圧倒された。うちの倍はあるだろうか。
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